Cityかまがや111号 連載エッセイ64 気まぐれティータイム

    忘れないで      江上真悟 (俳優) http://ameblo.jp/egamax/  

 今ではもう当たり前の会話になってしまいましたが、時の経つのは速いもんで……。 毎年美輪明宏さんの舞台が終わると半年が過ぎていて、この原稿締切り日もすぐにやってくる(笑)。若い人たちも時の流れを速く感じるようですね。時代のスピードが速くなっているからでしょうか……。今の世の中、次から次へとネタが運ばれてくる回転寿司のようです。興味あるネタには手を伸ばし、また次のネタを待つ……。耳が聴こえるらしい音楽家さんは今では懐かしの人です。細胞を料理していたお姉さんはお元気でしょうか? 議会でのヤジ騒動のその後は? 辞職した号泣議員さんはまだ切手を貼り終えていないかもしれません。マスコミは美味しいネタを食べ終えると、次の美味しいネタ探し。でもそれがキッカケで、その内情が浮き彫りになることもある訳で……。もしあの3・11がなかったら、東電の実体も今ほどは知らなかったでしょう。

 「あいときぼうのまち」という映画を観ました。日本の原子力政策に翻弄され、傷つき、失い、絶望しながらも、福島の地に生きる四世代一家族を描いた物語です。映画は「忘れてはいけない」強いメッセージを投げかけてくれました。連日新聞に載っていた行方不明者の数も、いつの間にか目にしなくなりましたね。政治は新しいネタに向かって走っているようですが、3・11は決して終わってはいないのです。

 専門学校の発表会の台本にこんな台詞を書いたことがあります。「……いつの間にか、今が遠い過去になっていって……いつの間にか、あの人のこともうすい記憶になっていって……いつの間にか、あの日の会話も遠ざかっていって……いつの間にか、あの時の想いも冷めていって……それでも時は何もなかったかのように流れ、過ぎてゆく……」 時代の流れが速いからこそ、忘れないで……忘れないで……。