Cityかまがや121号 インタビュー
竹細工作家(工房 珍竹林おじさん)江口信男さん

より本物らしい蟲(むし)を作る

■ 鎌ケ谷の自然の中で育つ


―生粋の鎌ケ谷っ子だそうですね。

 明治時代、おじいさんの代からで、家は農業をしていました。おやじはサラリーマン。隣が実家で、この辺はみんな田んぼと梨畑でした。
―子どもの頃はどんな遊びをしていましたか。
 当時はまだ公園整備されていなかったのですが、貝柄山公園あたりでよく遊びました。昔は田んぼでした。湧き水が出ていて、ハヤやシジミをとったり、ヤツメウナギもいたかな。親にはザリガニを生で食べるなと言われていたので、空き缶でゆでて食べたりしました。  木から木へ渡るターザンごっこ、秘密基地づくり。冬は凍って、よく長靴と竹の棒でスケートをして遊びました。  谷の向こう側からは縄文人の人骨も発見されていますから、この辺の畑からは貝殻がいっぱい出てきて、畑では邪魔物でした。遺跡の上の方にガラス工場がありました。  近くにあった母の実家ではタバコ栽培をしていて、乾燥小屋がありました。葉っぱの数をきちんと数えてあるのにいたずらして叱られたりしました。
―竹細工づくりの原点になっているような子供時代ですね。
 自然が好きだし釣りが好きです。釣りはおなかに入るまでが「釣り」だと思っていますから、料理が大好きなんです。「男子厨房に入らず」はつらかったですね。仕事から遅く帰っても、料理を作っておいてくれるよりも材料残しておいてもらう方がありがたかった。 

■ 偶然の出会い ■

―現役時代はどんな仕事?
 パナホームなど大手の会社等々で家の設計をしていました。  この自宅も30歳ころ自分で設計して建てました。しかし51歳でリストラにあいましてね。  そんなとき趣味の釣りをしに勝浦に行ったんです。勝浦の朝市で、パナホームのユニホームを着て、バッタを作って売っているおじさんに出会ったんです。その日のうちにバッタづくりを教えてもらって。もうすっかりはまってしまいました。11年前です。  彼はおもちゃを作って今一緒にイベントに出ています。もともとパナホームの下請けの大工さんだったのです。ほんとに人間の出会いってわからないものですね。(下の写真は江口信男さん作のコオロギ)

■ 設計図は頭の中 ■

―竹はどこで仕入れるのですか。
 珍しいものだと友人と交換したり、よその家によさそうな竹を見つけると「こんなものを作っています」と作品をお見せして分けていただいてきます。もちろん作品も差し上げてきます。
―竹の種類は?
 主として孟宗竹、黒竹、真竹を使います。油抜きをしてから使用しないと、白茶けてしまうのです。
―油抜き?
 採ったばかりの青竹から、水分や油分を抜くんです。私はバーナーであぶりその後布でよく磨きます。
―蟲の足などは穴をあけて埋め込んでいるのですか。
 そうです。こんな小さな部分も穴をあけて、足を埋め込んでボンドでとめています。
―とても細かい作業になりますね。 設計図は書くのですか。
 いえ。書きません。私の頭にあるだけです。ダンゴムシの足の数を正確に作っているかというと、そうではなくて、よりそれらしく見えるという事を目指しています。ですからクワガタを作ってもみんながイメージしているクワガタの姿を作る。だから「ミヤマクワガタ」ではなくただの「クワガタ」です。エビでも目をつけていないです。目をつけるとなぜか可愛くなりすぎて、本物らしくなくなる。ないほうがリアルなんですよ。
―今後やりたいことは。
 やり始めてすぐ東京ビックサイトに出展。15種50点が順調に売れ、売り上げは出展料を軽く上回った。以来毎年出展販売しています。この間12月には横浜赤レンガ倉庫でやりました。皆さんに見ていただくのは楽しみだし、買っていただいた方がかわいがってくださるとなお励みになります。  誰かやりたいと思う人がいたら伝えたいですね。なかなかやりたい人は見つかりませんけど。

*   *   *   江口さんに出会ったのは市民夏まつりの出店の店先。トンボ、カブトムシ、カミキリムシ、サソリなどあまりにもそっくりに作られた虫たちの姿に仰天した。蝶の羽は経木を使う。サソリの曲がった足はコテを使って曲げ、はさみの太さをあわせるために、一方の枝に穴をあけ別の枝の竹をもってきて穴に差し込みボンドで貼り付ける。     最近はペンダントも作るようになった。ペンダントトップはもちろん竹。バーニングペンで焦がして模様をつける。そんなデザインを考えるのも楽しい。もちろん子供の頃から絵も大好きだった。   自らを珍竹林おじさんと名乗り公房にこもって制作に励む。器用な人である。

ぷろふぃーる 江口信男(えぐち・のぶお)  昭和29年鎌ケ谷市初富生れ。大学卒業後、大手住宅会社などの設計に51歳迄携わる。その後転職、61歳で退職。現在は竹細工ひとすじの生活。今年は5月3、4、5日に幕張メッセで、5月27、28日東京ビックサイトで出展販売する。