Cityかまがや128号(2018年12月冬号)

鎌ケ谷の自然を訪ねて127 「サワラとゴンズイ、魚と同じ名前の木が…」 写真と文 秋山秀一  

「そこが大津川です。あのマンションの向こうが、前回歩いた所ですね」  そう言ったのは、前回も同行していただいた、市内の自然についてよく知っている、Sさん。  今回は、前回歩いた大津川の上流域を歩く、ということで、出発地点は、粟野コミュニティーセンタ―。

 まずは、大津川に架かる橋の上に立ち、橋の上流側を観察。  コスモスの花が咲いている。  花水木に、赤い実がなっている。 「これ、サワラなんですけど、字が、ここから見ると、サクラに見えるんですよ」  車が頻繁に通るアスファルト舗装された道から、大津川に沿った右岸の道、粟野の森へと通じる遊歩道を歩き始めたところで、Sさん、嬉しそうに…。

 木の幹につけられた名札が、見る角度によって、ワがクに、見えなくもない。 「木を見ると、サクラじゃないんですけどね」  サワラは、ヒノキ科。  隣に、スギ。  スギは、スギ科。  名札を見ながら、心は、まるで、小学生であるかのように…。 「あっ、カタツムリがいる」
 ふだん、自然とは縁のない暮らしをしていると、これでも、大発見。これが、結構楽しいのだ。  コブシは、モクレン科。  木の下に設置された説明板を、見る。いや、読み始める。一つひとつ、真剣に。 「ユズリハ、結構ありますね」  イヌシデは、〈粟野の森の代表的な落葉高木〉、と書いてある。  う~ん、勉強になるな~。  道と森との間にできた竹製の柵に沿って、歩く。

「ここに、竹林があります」  その竹林を見ながら、 「ここを歩いていると、京都にいるような感じがするんですよね」 と、言ったあと、Sさん、 「この道、いいですね」  と、しみじみと。さらに、 「通り抜けると、その先に、神社仏閣があるような。こうしてみると、ちょっと、嵯峨野ですよね」 と、想像力を逞しくして…。
 この竹の柵が、いい雰囲気を醸し出しているのだ。 「粟野の森も、こうして下草を刈って、きちんと管理しているから、いいんですよね」

 いろいろな鳥のさえずり。 「カサカサカサ」  落ち葉を踏みしめながら、鎌ケ谷の自然が感じられる道を歩く。 シラカシの木を見ながら、「このカシの木って、ものすごく堅いんですよね」と、Sさん。 「雑木林の『シャンデリア』と呼ばれるほど、下向きに白い花を今年も咲かせました」 と、エゴノキの説明板に。 「こういうのがあると、立ち止まって、読んじゃいますよね」
 キズタ、センダン、イヌザクラ…。道の端に、落ち葉。その上を、歩く。粟野の森へと通じる、この道は、今まで、何度も歩いた道である。そのたびに、いつも、新鮮な発見、感動がある。
「サワラは、魚の名前と同じですね」と、釣りも楽しむ、Sさん
、 「あっ、もう一つ、あった。魚と同じ名前。ゴンズイって魚いるんですよ」と、興奮気味に。 「天ぷらにすると、旨いんですよ。びっくりしたな~。木の名前で、魚と同じ名前があるなんて…」 「サワラとゴンズイ。ふたつもあるなんてね」

 ゴンズイに赤い実(写真左)がなっている。 「黒光りして美味そうな種子で、オナガなどの鳥たちは食べるが、果肉は少なく、ほとんどそのまま排出される」から、残ったのか?  ヒサカキ、シロダモ…、道をゆっくり歩きながら、気を楽しむ。まだまだ、発見がありそうだ。 (旅行作家・元大学教授)