Cityかまがや130号(2019年6月6日発行)夏号

鎌ケ谷の自然を訪ねて129 桜が、咲きました。 写真と文 秋山秀一  


自分にしか書けないものを、だれにでもわかりやすく書く。エッセイを書くとき、このことを、常に意識している。題材は、自分自身が実際に体験したこと、見たこと、考えたことのなかから選ぶ。
 今、ほぼ月に1度の割合で、1週間ほど海外へ旅に出る。フルタイムの大学教員生活に別れを告げた後はそうするつもりでいた。定年退職後、丸3年、そのことを実行しているので、その点に関しては、マアマアかな、と思っている。
 ときには、身近なテーマで書く、こともある。この連載も、そんな原稿のひとつ。前回の原稿の最後に、〈では、次回は、桜の咲いているときに歩くことに〉と、書いた。
 となると、今回は、何が何でも桜の花の咲いているときに歩かなければ…。だが、3月末から1週間ほど、ウズベキスタンへ取材の旅に出ることになっていた。で、その前に、東京の桜(ソメイヨシノ)が満開となった、3月27日、前回の続き、北総線に沿った道を、Sさんと一緒に、歩くことに…。

 まだ植えて間もない若木に、花が咲いていた。やっと咲き始めた、という感じ。咲いてて、良かった、というのが、正直な気持ちだ。
  『桜×鎌ケ谷=魅力アップ事業』と書かれた立札の最後に、〈植樹に要する費用の一部は桜の里親制度の寄付によるものです〉とある。 「これ、桜バイ鎌ケ谷イコール魅力アップ事業って読むんです。1人2万円寄附してるんです」  と、Sさん。
 寄付した人の名前が書いてある。ちょっとユニークな仮名もある。 「子どもの入学祝とか、結婚祝とか、お祝いのときに寄付してるんですね」  なるほど、《2万円出して、桜の里親に!》ということか。
 桜の木は育って、大きくなっていく。毎年、そのことを、里親として、確認。花が咲き、ここを通る人みんなを楽しませることに…。
 いいじゃん、いいじゃん。
  「あれ、満開ですね」
 北総線の高架橋の向こうに、白い桜の花が、満開だ。ソメイヨシノではないが、これも、桜。 「高架橋のコンクリートの柵が、自然の額縁のようでいいですね」  と、Sさん。
 上野公園の桜は、40種類ぐらいある。そう、公園案内のパンフレットに書いてあった。2月、3月、4月と、桜の花が、長く楽しめる。今年、不忍池の周辺に、河津桜の若木が何本も植えられた。ソメイヨシノだけが、桜、ではないのだ。

 自転車が行く。園児を乗せた乳母車が行く。高架橋の上を北総線が行く。空を飛行機が行く。

「P3Cですね」と、Sさん。  4時過ぎ、暖かな春の陽の光を受けて、ゆっくりと、歩く。
 そのまま、市制記念公園へ。  スカイライナーが、行く。
「新幹線だ」と、4~5歳の男の子。それを聞いたお母さんの笑顔が、いい。これで、いいのだ。

「ここには桜の木が約200本あるんですよね」と、Sさん。  公園の先が谷になっている。
「ここが、実は前に歩いた大津川の上流にあたるんですよね」  谷の手前に、柵が2列。
「ここに柵があるのは、大雨が降ったとき、下流に影響を与えないように遊水池として…」  と言った後、Sさん、
「まだ、ここまで水がやってきたことはないけど、ここまで水がきたときは上流域も水没状態になってるんですよね」  
説明板に、この柵の意味することなども、記されている。

 自分の住む土地が一体どういう自然環境の土地なのか、ここがどういう土地なのか、ということを日頃から知っておく…。それは、とても重要なことなのである。  (旅行作家・元大学教授) ▶桜×鎌ケ谷=魅力アップ事業 ◀桜(ソメイヨシノ)の花が咲きました ▶あれも桜。満開ですね ◀この柵の意味することは……