タウン情報誌 Cityかまがや131号(2019年9月) インタビュー

社会医療法人社団 木下会 鎌ケ谷総合病院 病院長  井上和人さん

医療の質が高く、 しかも患者さんに優しい病院を目指して

ぷろふぃーる 井上和人(いのうえ・かずと)
 1960年、大阪市生まれ伊丹市育ち。神戸大学で心臓血管外科を選択。のちに肝臓外科を学び、世界初の成人生体肝移植を成功させた幕内雅敏先生のもとで、元旦も休まず手術、治療に邁進。その後国立がんセンター中央病院、同センター東病院、日本大学准教授、日本赤十字社医療センター,行徳中央病院外科部長、大日病院院長などを経て、2019年4月1日鎌ケ谷総合病院病院長。

医学博士 日本外科学会認定医・専門医・指導医 日本肝胆膵外科学会高度技能指導医 評議員 日本消化器外科学会認定医・専門医・指導医 消化器がん外科治療認定医 日本肝臓学会専門医・指導医 日本超音波医学会専門医・指導医 がん専門医(国立がんセンター) 緩和ケア研修会修了 がんリハビリテーション研修会修了 臨床研修指導医講習会修了


■親切な病院に■

―お医者さんになろうと思ったきっかけは。
 兄が、小さいころ事故にあって亡くなったんです。「その日は4月29日祝日で、救急患者を受け入れてくれるところがなくて・・・」という母親の嘆きが心に突き刺さっていまして。幸い丈夫な体に産んでもらったので、医者になろうと思いました。
―先生は指が長くて、とても器用 そうですね。
 器用な子だといわれて育ったの で、自分では器用なつもりでした が、外科の先生たち、器用な人が たくさんいて驚きました。上には 上がいるんですよ。
―外科の先生は手術するのが大好きと聞きますが、本当ですか。
 院長の仕事もしていますが、外来も担当していますし手術もしています。  手術によって回復した患者さんを見るとうれしくなって、よかったなあと思いますから・・・やっぱり手術好きですね。
―院長としての夢は。
 この病院は2007年9月開院。鎌ケ谷市の市民病院としての建設の呼びかけに応じて建設したものですが、救急医療、周産期医療、小児科24時間体制が約束でした。小児科の先生もそろいましたが、まだ入院設備はありません。  2011年放射線治療センター2012年ダヴィンチ導入(前立腺がん摘出)。2015年9階に緩和ケア病棟なごみが新設されました。  がん治療専門病院と同等の手術療法、化学療法、放射線療法、緩和医療を行っています。様々な診療科が集う総合病院のメリットを生かした総合的な治療も当院の特徴です。  一日平均800~900人の患者さんが訪れます。各科の医師や医療スタッフが、質の高い医療技術と患者さんへの親切な対応ができるよう、引っ張っていきたいと思っています。

■麻酔の進歩■

―趣味は?
 クラシック音楽を聴くことです。 主にピアノ曲が好きです。
―手術中音楽を聴く先生が多いそうですが。
 そうですね。昔は静かでないと集中できないといっていましたが。1995年ころから音楽をかけるのが普通になりました。  私も手術中音楽をかけていますが、若い人の方が暇な時間があり、集中力が切れるだろうからと、若い人の好きな曲をかけてもらっています。長時間になるとシーンとした中でやるよりも音楽が流れていた方が、かえって集中できるのかなとも思います。
 最近は麻酔が良くなってきて、患者さんの負担も減ってきていますから、早くやるより「ゆっくり丁寧な手術」をやるという風になってきました。  30年くらい前は、1時間から1時間半くらいで胃の手術をしていましたが、今は3〜4時間かける手術も多くなってきました。

■肝臓外科が専門です■

―専門の肝臓の分野の進歩は?

 以前は、肝臓分野は遅れていて、肝臓は切っても止血が難しく、切り口を焼いても縫っても血液や胆汁が漏れ出てきて、術後に亡くなる方が多かったのです。しかし1980年代幕内医師らの研究により、術中超音波検査と流入血遮断によって肝臓の内部構造がリアルタイムでわかるようになりました。  今ではどんな場所にある腫瘍でも正確に切り取ることができるようになりました。肝臓がんや肝臓移植などの分野でも日本は技術的リーダーです。  私は早くから術者として携わる幸運に恵まれ、海外の手術も経験してきました。少しでも気にかかることがありましたら、気軽に声をかけてください。
 肝臓・胆道・膵臓・大腸などの消化器に生じるがんをはじめとした病気、外傷(切り傷、刺し傷)、急性盲腸、痔核・痔ろう、鼠径ヘルニアなどは外科へおいでください。  悩んでいないで、相談してください。患者さんには一番いい選択をしてほしいと願っています。

*  *  *  すらりとしたスリムさが印象的な井上院長。物腰も柔らかである。東京タワーが自宅から見えると言う。ちょっとロマンチックなドラマを感じさせる方である。でも今はやりの医療ドラマにあるような権力争いとは程遠く、ほんわか優しい上品さが漂う。お休みの日は何をしていますか?の質問には年の割には子供が小さくてね。7歳10歳12歳の子と遊んでいます。特に7歳の娘と、とにっこり。  職員の幸せがあって、初めて患者さんへの優しさも生まれると、医療スタッフへの配慮も忘れない。スタッフには精神論やおれについて来いではなく、説明してやって見せて「共感」してもらうことで、「地域に愛される病院」への道に通ずると信じている。