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62号 鎌ケ谷の自然を訪ねて

NO61回

スミレ、シロバナタンポポ、田圃にカルガモが…

写真と文 秋山 秀一

 「今日ちょっと後に用ができたんで、家まで行きますよ」
と、Kさんからの電話。

 今回は、前回に続いて、根郷川に沿って、中沢川との合流地点まで歩く
予定だった、のだが・・・。
 家まで迎えにきてくれたKさんを若干待たせることになってしまった。
しかし、Kさん、その間に、何やらまたまた発見したらしい。

 「ビックリしますね。ここだけで、4種類もスミレがあるなんて・・・。
この空き地で。空き地をちょっとのぞいたら、ありましたよ」

 わが家の前のちょっとした空き地。通りをはさんだだけの
こんな身近な所に、ふだんまったく気にもかけて
いなかったようなそんな空間に、
スミレの花が咲いていた。
しかも、4種類も。

「白い花はマルバスミレ。花が小さくて中心部だけが
ちょっと色づいているのがツボスミレ。
紫色のはタチツボスミレ、これが一番ポピュラーですね。
そして、これ、外来種のスミレなんですよ」
 スミレについては特別な思い入れのあるKさん、
やや興奮気味に説明してくれる。


 サンショウ、ムラサキケマン・・・、回りを見ると、
まだいろいろな植物が・・・。
 Kさんの話を聞きながら、 「これ、スミレ。これは・・・」
と、季節ごとにこの空き地に咲く
花に興味を示す8歳になる娘のことが脳裏に浮かび、
思わずニヤリ。

 「スミレはムラサキ、と決めてかかっているから、
白い花見ても、スミレって思わないんですよね」

たしかに、その通り。
白いスミレの花もある。しかも、
こんなにも身近なところに咲いているなんて・・・。


 「シロバナタンボポの群生があるんですよ。
あんなの、あんまりないんで、
ちょっと見ていきましょうか」

 なかなか本題に入らないのは、いつものこと。
しかし、これで、いいのである。この寄り道が、
楽しいのである。 移動する車の中で、
 「スミレなんか、キスミレ系の黄色いのがあって、
白いのがあって、緑色あり、赤あり、いろいろあるんですよ。
ムラサキのほかに。
ケマンだって、ムラサキが一般的ですけど、
キケマンもあるし・・・」

 シロバナタンポポだって、通りすがりで見ると、
ほとんどの人はタンポポだとは気づかないで通りすぎてしまう。
市役所のすぐ近く、東武線の踏切を渡った向かい側に、
シロバナタンポポの群生が・・・、
 と思って、見てみると、「あっ、まいったな」
 と、Kさん。
 花がみんな閉じていた。こんなことも、ある。
 で、Kさん。
『野草ハンドブック』(山と渓谷社)を取り出して、
シロバナタンポポのページを開いた。

<私たちは簡単にタンポポの花は黄色と思っているが、
中国地方や四国では大部分がこのシロバナで、
タンポポの花は白いものと思っている人が多い。
東京付近でもごくまれにあるが、西にいくほど増える。
大きさはタンポポのなかで大型に属し、開いた花の
直径は4センチ以上になる 。>


 東京付近ではごくまれに、といわれるタンポポの白い花が、
市内、それも、市役所のこんな近くに群生しているなんて、
知らなかったな〜。

 「雨のあとで、曇っているし、時間も午後になってるし・・・」
花が開いていなかったことの理由づけを、いろいろと・・・。

 まず、現場を見てから、そのあとで、図鑑を開く。
図鑑はあくまでも、あとで。これ、大切なこと。

 花はいつでも咲いているわけではない。
それが、自然というものだ。現場に出て、
そのことを知るのはとても意義のあること。
最近流行りのインターネットできれいに咲いた花の写真だけを見て、
分かった気になって、現場を見ることをしないままに、は、大きな問題。

 便利になればなるほど、現場を知るということが、大切になる。
実際にフィールドに出かけ、自分の目で見て、そこで何かを感じ、
あれこれ自分で考える、そのことが、大切なのである。



 ここで、やっと、根郷川に沿って、歩くことに・・・。
 日本ハムファィターズスタジアムが見える。
「この辺、前に歩きましたよね。全部埋めちゃうんですね」
「見る陰もないですね、あの頃に比べると」
 会話は若干沈んだものに・・・。
が、めげずに歩く。まあ、変わることが全て悪い、
と決めつけてしまうのも、これまた問題といえば問題。
その答えは、どう変わったか、に、あるのだから・・・。
 「あそこが、新橋ですね」
と、Kさん。

 橋の上に立ち、以前ここを歩いたときと同じように、
川の上流側と下流側の風景を写す。
橋の下流側には、ほんの少し田圃が残っていた。

 「これギシギシですね。あれ、オニハコベ」
ハナダイコンの紫の花も咲いている。
田圃を覗きながら、Kさん、
「これが、まさしく、タガラシです」 田の回りに、ぐるりと、
タガラシの黄色い花が咲き、そばにセリもある。
 「このセリも食べられますね」スズメノテッポウを見つけたKさん、
ヒョイと引っこ抜いて、口へ。「ピーピー」と鳴る。
うまいもんである。

 川に流れ込んでいるちょっとした水の流れ、
そこに、カルガモが2羽いた。 そばに寄ろうと、歩き始めると、
サーと、飛び立ち、数十メートル先の川のコンクリート護岸の上へ。
「この黄色い花はヘビイチゴ、これが、オランダミミナグサ、
クレソンの白い花も咲いてますね・・・。
 この辺じゃ、ここぐらいしか田圃なくなっちゃいましたね」
 「田圃って、また別の、何かホッとするもの、
包容力といったものがありますね・・・」
 こんな会話を交わしながら、いいオジさんが、二人、
宝捜しでもしているかのように、ブラブラと・・・。


(旅行作家・日本エッセイストクラブ会員)

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