写真と文  秋山 秀一


「今回は、寄り道ということで、動植物園へ・・・」
と、Kさん。
寄り道はいつものこと。
「いいんじゃないですか。そうしましょう」と、ごく自然に・・・。
今回はKさんの他に、もう一人、同行者がいる。小学校3年生のI ちゃんである。
寄り道ついでに、Kさんと合流する前に読んでいた本のなかに心に残る文章があったので、その一部を紹介する。
《ぼくは映画というのは観にきてくれた人に、いい気持ちになってもらうことが大切だと思うんです。悲劇を描いても救いが全然ないものより、どこかに救いがあって、生きていればいいことがあるんだと観客に感じさせる。これが、映画制作者の精神として必要だと思うんです》『対談 山田洋次 2 映画は面白いか』(旬報社)
ぼくの大好きな映画『男はつらいよ』の山田洋次監督の対談集。高倉健さんとの対談もいい。この本を読み終えた後のいい気分の状態で、「City かまがや」の取材のために外へ。
『旅するシネマ』を出版した後、「続きの本は出ないんですか」と、何人かの人に言われたが、実は、旅と映画に関する次なる本が出版される予定になっている。原稿執筆の途中、気分転換のつもりでナナメ読みした本のなかに心に残る文章があったりすると、得した気分になる。
60号以上も続いたこの「City かまがや」も、すごいもんだと思う。創刊当時と変わらぬスタンス。軸がぶれることもなく、フェアーに、きれいに・・・。これこそ、文化そのものだ。スタッフの努力に感謝!取材のために、市内を歩き、原稿を書いているとき、常に、そう思ってきた。こうして創刊号からず〜と関わってこられたなんて、これはぼくにとっても、大きな喜びである。
今年の8月号が創刊50年記念号となった『文芸広場』という月刊雑誌のインタビュー(9月号に掲載される)を受けたばかりで、これまた、この雑誌を支えているすばらしい二人の人物(上山さん御夫妻)を知ることになり、気分は若干ハイの状態に・・・。
話がどんどんずれていってしまう。こりゃ、ヤバイ。この辺りで、本題に・・・。


  

今回歩いたところは、鎌ケ谷市の西に隣接する「大町レクリエーションゾーン」の一角に位置する「市川市動植物園」。
「この辺りの自然を残すために、動植物園作ったんですよね」
と、Kさん。
ちょっと歩いてみると、たしかに、この辺りの自然との調和を考えた造り方がされている。
梅雨明け初日、日差しは強い。風があるので、日陰に入ると、わずかに涼しさを感じるが、歩くとすぐに、汗が噴き出してくる。青い空、白い雲・・・。
「セミの声聞こえるね。チーチーって聞こえるのがニーニーゼミ、こっちの方がアブラゼミですね。I ちゃん、分かった」
と、Kさんが言うと、
「分かった」
と、I ちゃん、元気な声で。
久しぶりに、小さな子どもといっしょで、Kさん、やや、はしゃぎ気味だ。
大きなネットに囲まれた広い空間のなかに、さまざまな鳥が放し飼いにされている。
中に入ると、その出入り口の上に鳥の巣があり、親鳥が巣の上に・・・。
「卵を温めているんだ」
と、言うと、
「いきなり開いたりして、驚かないのかな」
と、鳥を気遣って、I ちゃん。


  

パネルに鳥の写真と名前が載っている。さっそく、写真を見ながら名前の確認。そのパネルの上に乗っている大型の鳥はコウノトリ科のシュバシコウ。卵を温めていた鳥と同じ鳥だ。
トモエガモ、ベニイロフラミンゴ、ヘラサギ、ムギワラトキ、アネハヅル・・・
「学校の図書の本で見たの、アヒルの場合だけど、羽の間に油ぬってるんだって」鳥のさまざまな動作を観察しながら、Iちゃんが説明してくれた。
「あっ、何か落ちてきた」
落ちてきたのは、鳥のフン。見上げると、木の上に、鳥が。「ぼうしかぶってきて、よかった」と、I ちゃん。
観鳥園の外に出たところに、サル山。
「ポー」っと、ミニ鉄道の汽笛の音がする。
竹の子が所どころに出ているみごとな竹藪に沿った道を下っていくと、ふれあい広場にでる。そこに、ミニ鉄道が走っている。
「この周辺の竹の子はレッサーパンダのえさにするため持ち帰ることのないようおねがいします」との注意書きがあった。
レッサーパンダはこの動植物園の目玉の動物。笹はレッサーパンダの重要なエサなのだ。
水場があると、ホッとした気分になる。
小獣ゾーンとモンキーゾーンを、説明パネルで動物の名前を確認しながら見ていく。
「ダレてるね、暑くて」
と、Kさん。
この暑さ。ダレルのは、人間ばかりではない。動物にも厳しいのだ。
「ミーマキャットって、ヘビ食べるんだよ。幼稚園のときの図鑑にのってた。毒ヘビ退治に使うんだって」
と、I ちゃんは、いたって元気に。
一通り見て回った後、レストハウスでかき氷を食べて、休憩。
外に出ると、白いホタルブクロ・・・。植物の話になると、本領発揮のKさん。水の流れもある。森の中に水の流れる音が静かに・・・。いいもんだ。
この続きは次回ということに・・・。


  

(旅行作家・ 日本エッセイストクラブ会員)

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