タウン情報誌 City かまがや    

鎌ケ谷の自然を訪ねて83.
「鎌ケ谷五丁目   ふれあいの森」 写真と文 秋山秀一

「いいところ見つけましたよ」  そう言いながら運転するKさんの車に乗って、今回の目的地へ向かう。 「ここですよ」  車を降りたところは、船橋市との市境にある鎌ケ谷五丁目《ふれあいの森》。 「ここに車、修理に出したんですよ」  向かいに、車の修理工場。 「そしたら、ここ見つかったんです。怪我の功名ってやつですね。ワッハッハ」  と、夏真っ盛り、太陽はカンカンに照っているのに、Kさんの頭の中はそれに負けじと、元気もりもり、爆発、といったところだ。

 深刻な顔をして悩んだ姿よりは元気な方がいいのだが、それも程度問題で……。  森の中に入る。  杉の大木が多い。 「この杉、植林したものですね。樹齢は四〜五〇年といったところですかね」  と、Kさん、いつものように。 「クークークー」  キジバトの泣き声を聞きながら、森の中を歩く。   ミズヒキ、シュロ、オモト、ヤツデ、アオキ、……。 「みんな、鳥のウンチだね」  これらはすべて、鳥が運んできたもの。ウンチとともに、種が落ちて、そこから芽が出て・・・。 「住宅地の中に、ポツンと、森がある。いいですね」 「通り道になってますね」 「お年寄りなんか、心休まるでしょうね」 「あっ、トカゲ、いた」  3ヶ月に一回、会話のような、そうでないような、Kさんのこんな独り言(?)を耳にしながら、鎌ケ谷市内の自然が感じられるようなところを、こうして、ただなんとなく、歩く。

 ときに、「楽しい発見」をすることもあるが、特別な発見なんてなくてもかまわない。ただ、こうして、歩く、それだけでいい。     が、油断大敵。 「プーン」  と、きて、チクリ。  痒い。  蚊も、多いのだ。 「あっ、カラスアゲハ」  黒いチョウチョがヒラヒラと優雅に飛んでいる。  自転車を押して、森の中の道を行くおじいさん。 「あっ、トンボだ」  赤トンボが、小枝の先っぽに止まった。 「これ、面白いですよ」  と、Kさん、何やら、また面白いものを発見したようだ。  木陰に、ミミズがいた。 「ミミズを追っかけて、食おうとしてるんですよ」 「あっ、食った。食ってますよ」  甲虫が、ミミズをガブリと、食べていく。  これも、自然の生物世界の中ではごく自然なこと、なのだ。 「下がフカフカですよ」

 舗装道路と違って、歩くと、グッ、グッ、ときて、足に優しいクッションのよう。 「これ、木くずを細かく砕いたものを敷いてますね」 「じゃあ、市でまいたのかな」  パチン。  ノートを持つ手の甲に、黒い蚊。 「私も両腕、メタメタです」  と、半そで姿のKさん。  木陰にカラスアゲハが何匹も。 「あっ、来てくださいよ。今度3匹でミミズ食べてますよ」  一匹のミミズを、3匹の甲虫が食べている。 「コトコトコト、コトコトコト」  風に揺れて、上の方の木の枝が擦れる音がする。 「このササ、笛になるんですよね。ちょっと音を聞かせましょう」  と言って、Kさん、ササを口へ。  が、何度やっても、昔のようには、音がでない。

   諦めて、森の中を歩く。 「赤トンボいますよ。麦わらトンボもいました。オオシオカラトンボのメスもいました」  通り抜けの道として、自然たっぷりなこの森の中を歩いていく人がけっこういる。 「音がします。あっ、上の方にいました。コゲラです。いわゆるキツツキの仲間です」  Kさんの、この観察力には脱帽である。   蛾の羽がクモの糸にひっかかって、風に揺れている。  小さなトカゲの、紫色の尾っぽ。木漏れ日が作る、光の芸術。どれも、きれいだ。 ## (旅行作家・日本エッセイストクラブ会員)

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