タウン情報誌 City かまがや    

鎌ケ谷の自然を訪ねて84
「東道野辺ふれあいの森」    写真と文 秋山秀一

「こんな記事が新聞に載っていました。タヌキが出てきたんです」  会うなりKさん、そう言いながら、タヌキが写っている新聞の切り抜きを見せてくれた。 「しかし、この森、浅いんですよ。どこにタヌキがいるんですかね」  タヌキのことがかなり気になっているご様子の、Kさん。では、と、その気持ちを汲んで、今回は、タヌキが現れたという《東道野辺ふれあいの森》を歩くことに。



 年が明けてから寒波到来、今年の1月は、中旬以降、本来の真冬の寒さの日が続いた。1月下旬の、寒い、しかも、どんよりとした雲が低く漂った日に、鎌ヶ谷の自然の中を歩いたのだが、気分の方はいたって明るく……。
 《東道野辺ふれあいの森》は、以前ここに登場したことのある、道野辺小学校に隣接する手通公園のそばにある。が、この森を歩くのは、今回が初めてのこと。 「あっ、鳩」  20羽ほどの鳩が群れになって、頻繁に頭を上下に動かしながら、森の大地が与えてくれた餌をついばんでいる。 「タヌキですよね。タヌキのいそうなところは……」  そう言って、森の中を歩きながらKさんが発見したものは、空き缶などのゴミ。  それを拾って、すぐそばにあったゴミ箱の中へ、ポイ。 「ここにゴミ箱があるんですよ。ルール守ってほしいな〜」  と、若干、あきれ顔で言い、 「でも、タヌキいないですね」  と、残念そうに。  こちらの都合で、勝手に昼間にやってきて、すぐにタヌキにお目にかかれる、なんて、そんな虫の良い話はないというもの。

 しかし、ここでめげないのがKさん。すぐにお得意の植物観察にチャンネルを切り替えた。 「この木、ケヤキですね。細いけど。これは、シロダモってやつですね。シロダモって言うけど、実は赤いんですよ」  そう言いながら、小型の図鑑を開いて、赤い実を確認。  土の上に厚く積み重なった落ち葉の上を歩くのは、なんとも気持ちがいい。 「アオキがあって、ヤツデがあって、ヒイラギもありますね」  どれも、鳥が運んできたものだ。赤い実を食べた鳥が、木の上でウンチをして、種を落とし、その種から芽が出て……。

 森の奥の方が低くなっている。周辺の民家との境界線に沿って、ぐるりと、歩く。 「見っけです」  先を歩くKさんが、うれしそうに。見つけたものは、梅の花。蕾がふくらんで、ポッ、と一つ二つ開き始めたかな〜、という程度でも、大喜び。 「これ、ハランです。生花や日本料理に使います」  サクサクサク。二人の足音、それに、時折、カラスの鳴き声。 「匂いますね」  匂いといっても、タヌキの匂いではなく、水仙の花の香り。Kさんは嗅覚も優れているのである。  
 森の中ほどに、ベンチが三つ。  足を引っ掛けて、上半身を上下に動かし、腹筋を鍛えるためのものが二つ。それに、背筋を伸ばすためのものが一つ。  散歩の途中、ベンチで一休み。ついでに、このベンチを活用して、ちょっと体を動かしてみる。 「せっかくあるんだから、きれいにしておけばいいのにね」  そうすれば、利用頻度も増え、健康にもいい、ということに。

 タヌキにはお目にかかれなかったが、新聞に載ったローカル記事が切っ掛けとなって、東道野辺ふれあいの森を歩くことになった。 「久しぶりに、手通公園もちょっと歩いてみますか」  林の中を抜けて、下ったところに、広い空間。トイレも一つ。  山茶花の花が咲き、ツグミ、キジバトなど鳥の姿も。 「さっき、ホオジロもいました」 「だいぶ整備されましたね。前来たときは、こんなに整備されてなかったですよ。いい公園になりましたね」  そんな会話が、ごく自然に。 「こりゃ、いい公園になったわ〜」  と、Kさん、気分よさそうに。  帰りがけに通った道野辺小学校の裏門に、《さえずりの門》と書いてあった。これも、いい。 (旅行作家・日本エッセイストクラブ会員)