タウン情報誌 City かまがや 87 号 

鎌ケ谷の自然を訪ねて86
鎌ケ谷の田舎道を歩いてみると・・・    写真と文 秋山秀一

 「ここ、ここですよ。ここに集まって、餅つき大会やったり、サツマイモの収穫祭やったりしているんですよ」  市立体育館に隣接するグラウンドのそばの道を歩き始めたところで立ち止まったKさん、畑の一角を指差して、そう言った。 「この辺りは、中沢や佐津間といった昔からある鎌ケ谷の畑とはちょっとちがうんですよね」  今回は、そんな畑に沿った道を、ぐるりと歩くことに・・・。

 「リンゴですね」  こんもりとした雑木の塊の中に、りんごの木があった。その木に、直径5センチほどの青い実が、ポツン、ポツンと、なっている。  レモンもある。  月桂樹もある。 「結構いろいろあるんですよ」
 そう言いながら、Kさん、草むらの中からミントの葉っぱを一枚摘んで、我が鼻先へ。
 懐かしい、この香り。  モロッコを旅したとき、ラバトやマラケシュのカフェーで飲んだのは、いつも、ミントの葉っぱがたっぷりと入ったミントティーだった。この国では、男の姿しかない、街角のカフェーで最もポピュラーな飲み物といえば、それは、ミントティーなのだ。  ほんのりと薄くピンクがかった、ミントの花も咲いている。
 ここは、女衆が中心なんですけど、男衆も協力してるんですよね」  ヒバリ。ウグイス。ニイニイゼミ。そして、カラス。  畑に、植えたばかりの、枝豆。  垣根に、ヒルガオの花が咲いている。
 道端にタンポポの綿毛を発見したKさん、童心に返って、それを手に持って、  「フー」  と、思い切り、吹き飛ばして、大喜び。 「キンカンの実がまだ残ってますね」 「玄関先に、ヤマモモの実が落ちてますね」 「あの垣根、タラの木が・・・」  そんな会話を楽しみながら歩く。
 一見家庭菜園のような畑に、ナス、トマト・・・。ウコンも植えられている。 「この空間も、いいですね」  と言うと、 「こういうのどかさが必要なんですよね」  と、心に余裕の、Kさん。
 鎌ケ谷の、何気ない、ごく普通のこんな田舎道を、気の向くままに、のんびりと歩く。  これが、いいのだ。
 アゲハチョウが、一羽、道端の草むらにとまっている。  そばによると、ゆっくりと、品よく、舞って、また、とまった。  薄いピンク色をした釣鐘状の可愛い花が咲いている。  花の名は、ヘクソカズラ。 「臭いを嗅いでみると、何でヘクソなのかよく分かりますよ。嗅いでみて下さい」  Kさんはそう言うが、これはすでに、体験済み。で、今回はパス。 「このヘクソカズラ、美しいでしょう。でも、臭いを嗅いでみると、『ウエー』って、ひどい臭いなんですよ。分かるでしょうこの名前がついた訳が・・・」
 Kさんが道端の草むらの中から摘んできたブツブツの赤い実は、ナワシロイチゴの実。で、食べる。 「この白い花、カラスウリの花ですわ。ああ、もう、カラスウリ、実がなっていますよ。この純白の花、きれいだな〜」 「人は自分にないものに感激するって、言いますよね」  こんな言葉のキャッチボールを楽しみながらの、散歩。  風も、気持ちいい。 「キーキーキー」  と、ブレーキを踏む音。  自転車が、通り過ぎていった。乗っているのは、麦藁帽子を被り、手ぬぐいを首に巻いた男が、一人。

 民家の庭に、オニユリの花。  玄関先に、クチナシの花。 「秋、いいんですよ。この道。ここは秋になると、エビツルの仲間が紅葉して、きれいなんですよね」  と、Kさん、しみじみと。 「これヤブガシラの花なんですけど、これもブドウ科なんですよ」  電柱にツタが絡まっている。 「これはただのツタなんですけど、これも、秋になると、紅葉してきれいですよ」
 鎌ケ谷の田舎道、春・夏・秋・冬、どれも、それぞれに、いいのである。歩いてみれば、ね。 (旅行作家・日本エッセイストクラブ会員)