タウン情報誌  Cityかまがや  88号

連載エッセイ41. 気まぐれティータイム
★ 脚本作り ★ 江上真悟 (俳優)  

 毎年秋から年末の時期は悪戦苦闘の季節であり、睡眠不足の日々が続きます。というのは専門学校の舞台公演の脚本を仕上げなければならないからです。生徒約三十名の一人一人に役を付けてあげてのオリジナル作品です。生徒たちの為に作った「夢びとたちの詩」という歌は、歌手のミネハハさんもコンサートで歌ってくれています。その執筆作業は今年で十六年目になりました。(このエッセイも十年になります!)

 先日過去の公演ビデオを観ました。初期の作品には今やテレビで売れっ子の土田晃之君や声優で活躍中の高橋広樹君の顔もあります。二児の母親として女優を続けている者もいます。初年度に教えた生徒は現在三十六歳ですからねぇ〜(笑)。

 毎年中野ZEROホールで卒業公演をやっていた頃の話です。終演後ロビーで生徒たちが涙、涙でお客さんたちと盛り上がっている時、その間をぬって老夫婦が近づいてきました。「演出された先生ですか?」「はい」。「とても感激しました」。「ありがとうございます。生徒の肉親の方ですか?」「いや、近所に長年住んでいる者で、たまたま通りがかりで入りました。今まで生きていた中でこんな感動は初めてです」。その後毎年その老夫婦は観に来てくれました。「一年の中で私たちの唯一の楽しみです」。そんな有難い言葉も頂きました。しかし何年か後、劇場は中野から他の場所に移った為、その後その老夫婦の顔を見ることはありませんでした。あれから六年が経ちます。「お元気でいらっしゃるだろうか…」フトそんなことを思いつつ、脚本の執筆作業は今日も明け方まで続きます。

 「この台本はみんなへのラブレターです。その返事は本番の舞台上でのみんなのエネルギーとして待っています。想い出される日ではなく、忘れられない日にして下さい」。なんてことを、台本が完成したら生徒たちに言ってみようかな…(笑)。まぁ、こんな敬語は使いませんがネ。今回も直球勝負の感動作!!