タウン情報誌 City かまがや 89号 

鎌ケ谷の自然を訪ねて88
八幡春日神社の大木に咲く、ヤブツバキの花    

写真と文 秋山秀一
 1月下旬の花の少ないこの時期に、ヤブツバキは鮮やかな赤い花を咲かせている。 「ヤブツバキは、いろんなツバキの品種の元になってるんです。学名はカメリアジャポニカっていうんですよね」  ということは、原産地は日本、ということ、か。 《今日は、ヤブツバキで攻めるゾ〜》  会った瞬間から、Kさんのそんな意気込みが感じられた。 「ぐるっと、回って行きましょう」  そういいながら、最初に向かったところは、海上自衛隊下総航空基地に沿った道。  基地を取り囲む塀の外側には桜並木が続き、花の時期には、花見を楽しむ市民にとっての人気スポットになっている。だが、この時期・・・、はてな(?)と思っていると、 「内側にサザンカがずっと続いているんですよね。一ヶ月前には、もっと、すごかったですね」  と、Kさん。  確かに、塀の内側には、赤い花の咲いた木が続いていた。  ぐるっと回って、北部小や粟野保育園のそばを通ると、 「懐かしいですね」 「ここに、湧き水がありましたね」 「歩きましたね」  こんな、ちょっと年寄りじみた会話が続く。  この連載を始めてから、20数年経った。AKコンビもそれなりに、年をとった、ということか・・・。  
  「ヤブツバキの大木があるんですよ。そこへ行きましょう」  とKさん。  この日の目的地、中沢の八幡春日神社へ。  車を降りて歩き始めると、道路端に、真っ赤なヤブツバキの花がいくつも落ちている。  ツバキは、おしべが花びらとくっついている。  そのため、サザンカは花びらがバラバラになって落ちるが、ヤブツバキは花がそのまま、ポトッと、落ちる。  したがって、落ちた花を見ると、ツバキかサザンカか、分かる。  これ、Kさんの、受け売り。 「首が落ちるから、侍が嫌ったんですよね」  とも。
  鳥居の脇に、馬頭観音があった。  キクやカーネーション、花が活けてある。  その後ろに立っている卒塔婆に、「中沢にまつわる農耕馬、愛馬の霊位・・・」  と、書いてある。  中沢自治会館の前に立って、赤い花が落ちているところの、上の方を見上げると、大きなヤブツバキの木に赤い花が咲いているのがわかる。  参道の説明板に、 「注目すべき木として、暖帯林特有のヤブツバキが亜高木として森を被い、花は12月頃から・・・」  と書いてある。 「ピーツ、ピーツ、ピーツ」  と、鳥の声。 「ヒヨドリが蜜を吸いに来るんですよ」  境内を歩いていると、 「ツーツーツー」 「ちがう鳥も来てるな」  こんもりとした森の中を歩く。 「今、鎌ケ谷にこれだけ太い木が何本も生えているところ、あまりないですよね」  カサカサカサ。 積み重なった落ち葉の上を歩く。ほんのちょっと、道からそれて、 森の中に入っただけで、こんなにも気持ちがいいものか、と改めて、実感する。
  「あっ、ハート」  と、Kさん。  枝の途中にこぶができている。その形が、見方によっては、ハートの形にも見える。  体に似合わず、繊細な感覚で辺りを観察しているのだ。  お参りにやってくる人もいる。 「あそこ、葉っぱと枝が動いているでしょう」  Kさんの指差す方向を見ると、枝がかすかに揺れていた。 「ヤブツバキの蜜を吸ってるんですよ」  しばらく揺れていた枝の動きが止まった。そう思った瞬間、ヒヨドリが飛んでいった。 (旅行作家・日本エッセイストクラブ会員)