タウン情報誌 Cityかまがや90号 インタビュー
私市醸造株式会社    代表取締役社長 私市一康さん
木桶で発酵させる伝統的な 酢づくりを伝えたい

 私市醸造株式会社は食酢製造販売私市商店として、初代私市万次郎が東京に大正11年創立。昭和21年9月鎌ケ谷へ。今や鎌ケ谷を代表する会社だ。会長の富士彌さんから社長を引き継いで6年。社長の一康さんにお話を伺った。
ぷろふぃーる 私市一康〔きさいち・かずやす〕1960年鎌ケ谷市に生まれる。東部小、第二中学校、東葛高校卒業。九州大学理学部 生物学科卒。「ハインツ日本」勤務。1993年私市醸造株式会社入社、2003年6月代表取締役社長に就任。趣味 バードウオッチングと写真撮影、B型。座右の銘「一期一会」1女1男の父

■ 妥協はしない ■

―社長は親の跡を継ぐということに抵抗はなかったですか。
 サラリーマンの経験が10年ほどありますが、一番つらかったのは、会社の方針が自分の考えと違っていても、それに従わなければならなかったこと。実家の会社を継げば自分で方針を決められる立場になれる?と思ったとき、跡継ぎになるということに光が見えた気がしました。もちろんそこには責任という重い使命がついてきますが。
―どういうポジションで、私市入社という形になったのですか。
 工場の部長という立場でした。今までと違ったやり方をすれば摩擦はあって当たり前ですから、私は妥協しませんでした。ですから、当時ずいぶん人の入れ替わりはありましたね。
 何のために製品を作るのかという意識が大事だと思っています。お客様にいいものを提供し、しかも会社としては利益を上げ効率を追求しなくてはならない。それこそ“改革”の気持ちでした。
 うちは残業などありませんよ。きちんと時間内に仕事を終えるよう考えています。
―すごいですね。残業する人多いですよ。しかもサービス残業。サラリーマン時代の経験が役立ったのでしょうか。
 食品会社ですが、マーケティング、開発などの仕事をやりましたから、役立っていますね。

■ 子ども時代 ■

―子ども時代も、強い気持ちの子どもだったのでしょうか。
 どうでしょう。いろんなことをしたがる子だったと思います。切手やコイン収集、プラモデル。つりにもよく父親に連れて行ってもらいました。その年齢にも寄りますが、あきっぽかったのかなあ。  これだけは人に負けないという趣味や特技を身につけたいという思いはあったのですが、なかなかそういうものにであうことはありませんでした。でも大学に入りバードウオッチングと写真撮影に出合い、今も続いています。

■ 毎日黒酢飲んでます ■

―健康に良いといわれるお酢ですが、家庭での良い利用法は?
 お酢は代謝を促進するといわれています。中でも黒酢は他のお酢に比べてアミノ酸が豊富に含まれておりますので、毎日飲むことをおすすめします。毎日続けるには自分のスタイルを作ることです。私は必ず毎日、黒酢10cc程度をコップにいれ、200ccのパックの野菜ジュースを加えて飲んでいます。その他水で5倍程度に薄めて飲む玄米ドリンクもありますので、そちらもおすすめです。
―特に力を入れている商品は。
 醸造酢の発酵にはタンクによる近代的な通気発酵法と大桶による伝統的な発酵法があります。力を入れているのは昔ながらの木桶つくりの酒粕酢がベースの商品です。木桶と3年以上熟成させた酒粕から造られる昔ながらのお酢。木桶の風味がお酢に移行し、木桶でないと出ない味となります。これが江戸前の酢の伝統的な味です。この味の食文化を絶やすことがないようにすることが、使命です。
 これは業務用江戸前酢として、寿司組合に卸しています。また、この酒粕酢をブレンドして醸造酢、すし酢として生協等に出荷しています。
―今後の夢は?
 仕事面ではこの江戸前寿司用の酢を今後も継続していくことが使命と考えています。それをお届けしているのは寿司職人の皆さんです。寿司職人の皆さんは親方から修行を通して、代々技術と味を受け継いできた方々です。そうやって江戸前寿司の伝統を守ってきているのです。それを絶やすことのないように私も応援していきたいと考えています。
―仕事以外では。
 プライベートでは、趣味の写真をますます充実させたいと思っています。
―どんなものを撮影するのですか。
 主として野鳥です。海外も色々行きましたが、アラスカ、太平洋の島々、ガラパゴス諸島など行って見たいですね。自然の残っているところに惹かれます。
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 効率の悪いことは会社経営にとって何より無駄。残業しなくてもすむような仕事の仕方をするべきだという。  あらかじめインタビューの質問内容を教えてほしいという要望があったが、「効率よく」のための準備という意味であったのだ、と合点がいく。おかげさまでいつもはだらだらと話がそれるが、今回のインタビューは時間通りに終了。しかも私市さんの「江戸前寿司へのこだわり」もしっかり忘れず聞くことができた。  「夢をたくさん持った子どもたちの世の中にするには、親が元気でなくてはならない。そのためにも今後もがんばっていきたい」とメガネの下の強い目が優しい笑顔に変わった。*    *    *