タウン情報誌 Cityかまがや90号

鎌ケ谷の自然を訪ねて89
「山藤こそ、藤だ〜な」    写真と文  秋山秀一

 「今度はどちらを回られるんですか?」  そう言ったのは、鎌ケ谷市民で、同じ大学に勤務するMさん。  Mさんはこのコーナーの愛読者で、いつも、こちらがうれしくなるような読後感想を言ってくれるありがたい人である。  また、この四月から、事務局長として赴任することになったWさんも、鎌ケ谷市民。  このところ、私の回りでは、鎌ケ谷はいささか、メジャーなのである(?)。  

 4月16日、霞ヶ関の昭和会館で、「世界の街角を歩いて」とのタイトルで講演をした。  最前列に並んでいたお二人は、それぞれ、百歳と百一歳。シャンとしていて、最初から最後まで、ぼくの話しを熱心に聞いてくださった。  講演のあとで、三須式典さん、東久世秀昭さん、島津久純さん、それに、事務局長の岩村和俊さんと一緒に、20階にある、国会議事堂がすぐ下に見える部屋で、ビールを少々飲みながら昼食をともにした。
 そのときも、 「鎌ケ谷って、どんなところなんですか」  と、話の中で鎌ケ谷のことが話題に上った。  そんなときは、いつも、鎌ケ谷についてほんのちょっと話をした後で、この『Cityかまがや』をお渡しすることにしている。 「いいところですよね」  と、昨年の七月に鎌ケ谷に来たことのある東久世さんと島津さん。

 日頃海外の旅について、書いたりしゃべったりすることが多いが、そんなときにも、どこかでちょっとは、鎌ケ谷のことについても触れることに…。

 今回は、普段とはやや視点を変えて、五月の初め、鎌ケ谷の自然を訪ねて、市内全体をぐるりと回った。  例のごとく、Kさんと一緒に、である。

  「今、藤の花が見頃ですけど、藤棚の藤より、自然の山藤の方が私は好きですね」  と、Kさん。  グリーンハイツから、慈祐苑の辺りを通っているとき、道端の植物の群生を見て、Kさん、 「ずっと、白い花ありますけど、この白い花、クレソンの花ですよ。珍しいでしょう。湧水が出てるんですよね」  崖の下から水が湧き出ている。そんな崖に沿った道、その道端に、白い花が咲き、大きく育ったクレソンが群生している。
 こんなにも大量に群生していると、同じクレソンといっても、料理に添えられてでてくるクレソンとはかなり違ったものに感じられる。  どこに生えるか、また、どのくらい育ったかによって、同じ植物でも、かなり雰囲気は違ってくる。  それは、藤の花についても、同じことがいえる。
 里山の森の中に、群れて咲く藤の花を見つけて、Kさん、 「これ見ちゃうとね。藤棚の藤なんか、見られませんよ」  と、かなり、気合を込めた言い方で。 「やまふじこそ、ふじだ〜な」  藤棚をもじって、ふじだ〜な、ときたところは、この日のKさん、絶好調〜。
  「そばによって見てみましょう」  群れて咲く山藤の花のそばへ、草むらを分け入って、歩きながらも、いろいろな発見がある。 「これが、ハルジオン」 「これ、スッペとかスカンポとかって子どもの頃言いましたけど、正式な名前は、スイバです」 「この紫色の花、カラスノエンドウ、きれいな花ですよ」  自由人、Kさん、鎌ケ谷の自然の中にどっぷりと浸かって…、元気、元気。
 
「ここは、前にも歩きましたよね」 「季節が変わると、感じがずいぶん変わりますね」 「こっちの房はまだ小さいですね。向こうの方が大きいですね。向こうに行ってみましょう」  そんなことを言いながら、途中で、植物観察。  ヒメジオンの花も、よく見ると、花の色に違いがある。濃い紫色の花もあれば、白いのもある。 「ここ、ここ、ここですよ。こっちの方が圧倒的にいいですね」  Kさんが指し示すその位置に立つ。山藤、みごとである。  花を眺めながら、左右に移動すると、立つ位置によっては、まるで、大自然の大きな屏風の前にいるかのようだ。 「こっちなんか、奥もすごいですよ」 「藤見酒なんか、ないですかね〜」  酒はなくても、風を受けながら、鎌ケ谷の自然の中にいて、こうして自然の花を眺めるのは、いい気分である。  一本の桐の木に、紫色の花が咲いている。花の下に立つと、香りがプーンと。見上げると、花の向こうに、上限の月。  風流である。 「アッ、蛇」。  帰りがけ、大きな蛇に…。 (旅行作家・日本エッセイスト クラブ会員)