タウン情報誌 Cityかまがや94号
インタビュー  高野太鼓 代表  大久保春雄さん「体験こそ宝」         
 
ぷろふぃーる
 昭和16年1月25日、新潟生まれ。日本船舶振興会笹川良一氏の運転手を勤め定年退職。現在は高野太鼓を地域の子どもたちに教えたり、八木ケ谷北小学校体育施設開放委員会会長、あるいはスクールガードとして毎朝交差点に立ち、地域の子どもたちの安全を見守るなど、地域活動を活発におこなっている。B型。船橋市高野台在住。

■人の輪が広がって■

―4月4日、桜満開の滝不動祭りでの演奏は見事でした。
 私どもの会はちょうど20年を迎えます。滝不動での演奏ももう10年くらいになります。子どもたちにできるだけ演奏の機会を与えてあげたくて。何事も体験することが子どもたちの体に、心に残っていくことだと思います。そんな意味でも20周年記念の今年は会場で募金箱持って、ハイチ・チリ救援募金活動を子どもたちにやってもらって、8万1165円を皆で船橋市長さんにお届けしました。

―子どもたちは太鼓を軸にいろんな体験をしているわけですね。
 太鼓を聴いてくださった皆さんも、お花見に来た皆さんも、パネルを貼って応援してくれた自衛隊の皆さんも、そして今年からは船橋ライオンズクラブの皆さんも協力してくれて、うれしいですね。ひとりがつながるとその輪がどんどん広がっていく、いいものですね。新京成さんからも新京成グッズをいただいたり、ウォーキングイベントの日に太鼓をたたかせていただいたり。

―20年間の活動の輪が広がってきたのですね。そもそも太鼓との出会いは?
 最初は唄が好きで民謡をやりたくて、32〜33歳ころかな。でも声が悪くて太鼓へ。

―新潟で?
 おじが墨田区鐘ヶ淵で紳士服の仕立業をしていたので、そこに住み込みで働きに来てました。  修行は厳しかったです。姉の結婚式でも家に帰してもらえませんでした。技術は教わるものではなく盗むものといわれ、洋服はつぶして裏返して、どういう風になっているのか自分で覚えました。ところがこのおじさんギャンブル好きで・・貧乏で。このままいても店は出してはもらえないだろうと、親に頼んで身柄だけは自由にしてもらって、アパート暮らしを始めましたが、苦しかったですね。大家さんが家賃を取りに来た時、天袋に隠れていたこともあります。

■穏やかな家庭■
―結婚は。
 32歳で。お金もないし徹夜して洋服縫って結納金を作りました。 伝書鳩といわれるくらい寄り道することなく、まっすぐ家に帰りましたよ。その代わり妻も今まで私の心を荒げるようなことは一度もありません。

―太鼓をいっぱい買っても文句は言わないのですね。
 退職金の半分は太鼓代に消え、普段でも移動に経費はかかるんですが、許してくれています。やっぱり人様に募金を頼むにしてもなんにしても、自分自身がそれなりにきちんとやっていなければ、人には頼めません。

―太鼓を初めて買ったのはいつごろですか。
 平成2年。日本船舶振興会に勤めていた頃宮本卯之助商店にボディのきれいなのがあって、50万円で買ったのが始まりです。ちょうど高野太鼓を立ち上げた頃です。平成7年笹川会長が亡くなって、私も振興会を55歳で退職しました。今太鼓は25〜26個あります。  退職後1年間は仕事しないでひたすら金田スイミングに通いました。最終的には10年スイミングしたけど、私浮かないんですよ。自分ができるからといって、だれもができるとは限らないことを学びました。だから、子どもに接する時、頭を空っぽにして先入観持たず接するようにしています。

■笹川さんのこと■
 ―笹川さんってどんな人でしたか。

 笹川良一会長は世間ではいろいろ言われたところもありましたが、「夢の島」といわれたゴミの島を「船の科学館」や「レインボーブリッジ」に変えたのですから、先見の明ありです。中国などに行くと神様扱いでした。また特殊法人だと人事権が役所に移ってしまうので、最後まで財団法人にこだわって、人事権を渡しませんでした。私も相手が何を望んでいるのか、いつも考えて仕事してました。  トンガのお相撲さんがいたころには王様担当でした。昭和天皇の大喪の礼の時も1週間にわたって、トンガの王様の運転をし、皇族方も間近かにしました。そんなめったにできない体験が今、私を支えてくれて、どんなことにも物怖じしないで進むことができています。

*  *  *
 船橋市長に募金を届けた直後お会いした大久保さんはしわひとつない黒系スーツをビシッと決めて現れた。紳士服の仕立て屋さんだったと聞いて納得。  子どもたちには太鼓の技術よりも「礼儀」を教える。数多くの体験が人間を成長させると発表の機会をたくさん作る。中学生になると塾通いが多くなり太鼓から遠ざかってしまうのが残念だという。でも身の上相談に来る子もいれば、子どもの親たちの相談にのったりといそがしい。お酒なし、タバコなし、ギャンブルなしのまじめな人である。