タウン情報誌Cityかまがや94号

鎌ケ谷の自然を訪ねて93
軽井沢、市境の道を歩く 写真と文 秋山秀一

 「もう、なくなっちゃうのかと思って、残念に思っていたのですが、そうではなくて、良かったです」  ある人に、そう、言われてしまった。このコーナーをずっと読んでくれていて、しかも、「なくなってしまうのではないか」と、残念に思ってくれた、なんて、ご心配をおかけしてしまったことについては申し訳ないとは思うものの、何となく、嬉しいですね〜。  が、心配は無用です。 「Kさんと一緒に歩いて」というのは、とりあえず卒業しましたが…、二十年以上にわたって鎌ケ谷市内を歩いて書いてきた『Cityかまがや』のこのコーナー、そんな簡単に、止めてしまうなんてことは、できません。このタウン情報誌が続く限り、まだまだ続けていくつもりです。今後も、今まで同様、ご愛読、よろしくお願いいたします。  これからは、いろいろな人に登場願って、一緒に市内を歩いていただき、鎌ケ谷の自然について、書いていきたい、そう思っています。年に四回のこの鎌ケ谷の「まちあるき」、これは、ぼくにとっても、楽しみ以上に大きな意味のあることなのだから…。

 今回の出発地点は、新鎌ケ谷駅。白井との市境まで、道沿いに残る自然を訪ねて歩くことに…。  鎌ケ谷の植物や鳥など自然全般について、それも、戦後から現在に至るまで、本当に良く知っているFさんに一緒に歩いていただいた。  前回も登場した国道四六四号線を歩く。 「昔は船取線って言ってましたが…」  そう、ぼくなんか、今でも、その方がピンとくる。  精工舎通り、とか、ユニオン通り、とか、通りの名を聞いただけで、その通りのイメージが浮かんでくる。そんな通りが鎌ケ谷にもあった。数字を並べただけの通りの名前では、こうはいかない。  しかし、国道一号線が東海道や、二四六号線が青山通り、といったように、数字を聞いただけでも何となくその通りのイメージが浮かぶものもあるのだから、鎌ケ谷の通りも、使われているうちに、きっと…。 「この硝子屋さん、昔精工舎通りの、入ってすぐ右手にあったんですよね」

 鎌ケ谷消防署の前で、右折。  真直ぐ延びた、広い道を歩く。 「昔は、軽井沢に入ると、道を曲ると、ヒヤッとしたんです」  昔の道は、坂があって、曲がりくねっていた。真直ぐになって、車が頻繁に行きかう道にも、そんな歴史がある。  5月の初め、通りの右手、市制記念公園の八重桜はまだ花が咲いている。通りの左手、先の方に粟野の森が広がっている。その手前、低くなったところに、梨畑がある。 「なかなか梨畑を上から見るなんてできないですよね」  なんて、言いながら、その畑を上から見下ろすように、眺める。  まだ白い花がほんの少し残っている。  きれいに剪定してある。上から見ると、それが、よく分かる。これも、鎌ケ谷の、ぼくの好きな風景の一つ。 「剪定が大変らしいですね」  新緑のこの時期、木が、それぞれに、微妙な色のちがいを表現している。そんな粟野の森の横を歩く。 「森の横の道を夜歩いたことあるんですけど、昔は、クツワムシが沢山いたんです」  と、Fさん。  道端に薄いピンクの花が咲いている。 「ヒメジオンは淡いピンクの蕾が下を向いていて、一名貧乏草とも言います。ハルジオンはもう少し遅れて咲き、新芽が食べられるんです。ちょっと似ているけど…」

 道端に群生するヒメオドリコソウを見て、安田学園のグラウンドの横を通って、軽井沢の八幡神社へ。 「コブシの実、ゲンコツに似てるんです。すごいグロテスクな実なんですけど、春一番に咲く花なんです」  お堂があるからその名がついたという堂の下商店(どうしたさん)、それに、給食センターの前を通って、軽井沢の昔ながらの道を歩く。  道端の石碑を見ると、下のほうに、見ざる、言わざる、聞かざる、三猿の像が彫られている。 「この辺、山栗たくさんあったんですけど、だいぶ少なくなりました」 「アケビって、花が可愛いんですよ。今丁度花の季節ですね。あれは、葉っぱが五枚、普通のアケビです。三つ葉アケビはツルが太いんです。籐の材料になります」  桜の花が終わった後に、ニワトコノキの、白い花。  夜中の十二時に、「ホーホー」と、フクロウの泣き声を聞くこともあるとのこと。が、聞こえてきたのは、マウンテンバイクの音。 「下向いて咲くんですよ」  というポポの木を見上げると、確かに、真下を向いて、黒赤い花が…。 「軽井沢には、防空壕が二つあったんです。今でも一つ、残ってるんですよ」  そう言われ、一つ残っているという防空壕を見るために、その先へ、市境の道を歩いていく。 「あれが防空壕なんです。今、入り口は入れないようになっています。子どもの時は中に入って遊んだことがあります」 (旅行作家・東京成徳大学教授 観光文化学科長)