Cityかまがや98号 鎌ケ谷の自然を訪ねて97

粟野の森を歩く… 写真と文 秋山秀一  

 以前Kさんと歩いたことのある粟野の森を、今回、粟野の森を守った貢献者、《鎌ケ谷粟野の森の会》の小出達雄さんご夫妻と一緒に歩くことに…。

「秋山さんね、この川がきれいになってくれればね」
 森へ向かう途中、大津川の水を見て、小出さん、そう言いながら、
「自然の水が、横からポコポコ出てきている所ありますから…。カワセミがよく飛びますよ。ということは、何かいると思うんですよ」
 森が、川や海を育てることはよく知られている。大津川に清流が戻ってくるためにも、粟野の森の存在が大きいのだ。  森に沿った道を歩きながら、
「この木の上に、一昨年、オオタカの巣があったんです」

 ウグイスのさえずり、イヌシデの花を見て、子どもたちとのタンポポの長さ比べの楽しい話などを聞きながら、粟野の森に入る前に、「絞り水」を見ようと、再び大津川の辺に出た。
「ここはもと、サトイモ畑だったんです」
 丸太の腰かけがあり、ちょっとした広場になっている。  ここで、子どもたちとの楽しい自然体験を、何度も行ってきたとのこと。いい話だ。小出さんの話なら、子どもたちの心にも、スーッと、入っていったにちがいない。

「あっ、オオタカです」
 小出さんの声につられて、見上げると、確かに、腹が白い。オオタカである。空高く、オオタカが一羽、舞っているのを見た。
「おとうさん、出てました。量はそんなに多くないですけど、絞り水が出てました」
 カルガモが二羽、水路の数十m下流側に。
「ここんところも、カワセミがスーっと、行くんですけど…」
 こんな風にして、鎌ケ谷に残る自然観察を楽しみながら、いよいよ、粟野の森、柵の中へ…。

「サクサク」
 落ち葉を踏みしめながら、歩く。  スミレの花が咲いている。
「オオタカが警戒音出してます」
 小出さんには分かるのだ。  ちょっとした広場に出る。
「ここには、大型ゴミがうず高く捨てられていたんです」
 今でも、そこを掘ると、ガラスが出てくる。  鳩の羽根を発見。手にして、
「タカはきれいにスーと、抜くんだそうです。ネコなんかが食べると、ギザギザになるんだそうで」
「シロダモは裏が白くて、アオキは葉がギザギザしています。シロダモの新しい葉っぱはビロードみたいできれいですね」
 粟野の森には、自然が、いっぱい。春・夏・秋・冬、季節ごとに、楽しい話が、いくらでもあるのだ。
 4月中旬、春本番。ウグイスカズラの小さい花、ハナイカダのつぼみ…。  真っ直ぐ植わった杉が、何箇所かにある。
「同じ樹種が真っ直ぐ植わっている所があります。今、一つの森になっていますが、昔は別の所有者の森で、境界になっていた所です」

「カサカサカサ」
 森の中を、歩く。
「あれ、オオタカの巣です」
 言われた方向を見る。あった。  柵の向こうの、杉の木の上の方に、オオタカの巣だ。  このところ、いろいろとストレスが溜まって、なんとなくすっきりしない気分だったが、粟野の森を歩いていると、もやもやっとしたものが、スーッと、抜けていくような、そんな不思議な感じに…。  足元の葉っぱに、かじられた痕。
「ノウサギがかじった痕ですね。ノウサギは穴を掘らないんです。ちょっとした窪地で子どもを育てるので、ノウサギにはこのくらいのブッシュが必要なんです」
「下草をすべて刈っちゃうと、ノウサギは困るんです」
 下草がきれいに刈られている所があった。
「ここは、ゴミ対策で毎年下草を刈るんです。きれいにしておくんです。ここも、以前はゴミがすごかったんです」

 ヤマザクラの花が高いところに咲いている。二又、三又に分かれて太く育ったコナラの木は、以前、薪に使われていた名残。
「マキにして切って、そこから三つに分かれて大きく育った」
「春はいいですね。蚊もハチもいないし、クモの巣もないから」
 確かに。粟野の森、そして、小出夫妻の話。今日は、なんとも得したような気分で…、いい日、だった。粟野の森、それは、まさに、鎌ケ谷の貴重な、誇れる、自然文化そのもの。大事にしなくっちゃ。 (旅行作家・東京成徳大学教授 観光文化学科長)